ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「さすが五つ星ホテルですね……格が違う!」

「今度ゆっくり施設を案内してあげますよ」


総支配人としてのスイッチが入っている朝羽さんの嬉しい言葉に、私は笑顔で「ぜひお願いします」と返した。

スタンダードな客室はもちろん、できることなら一番グレードが高いスイートも見てみたいし、美食で有名なレストランにも行ってみたい。

考えるだけでワクワクしながら、地下一階にある私が働くショップへと向かう。

そこに向かう間、すれ違うスタッフが皆朝羽さんに丁寧に挨拶するのを見て、改めて彼がすごい人なのだと実感する。

そして驚きなのは、朝羽さんがお客様だけでなくスタッフに対しても、常に優しい笑顔を向けること。

総支配人なのだから愛想を良くするのは当然なのだけど、やっぱり普段見せない顔を目にすると複雑な気持ちになる。

私にももっと笑いかけてほしいのにな、って。

しかも、女性客は朝羽さんを振り返ったり、ぽっと頬を染めたりしているのだ。なんだか不快な気持ちがむくむくと湧いてきてしまう。

そりゃあね、カッコいい大人の男性に目が行くのはよくわかる。わかりますけども、一応この人は私の──。

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