ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「あっ霞さん、おはようございます」

「おはようございます。一段落ついたら少しだけ時間をください」


朝羽さんは穏やかに告げ、颯爽と売り場のさらに奥へ向かう。私に注目しまくるスタッフさん方に、とりあえず「おはようございます」と挨拶だけして、彼のあとに続いた。

白いドアが開かれた先は、パソコンデスクや丸いテーブルが置かれ、商品の在庫がきちんと整頓されているスタッフルームとなっていた。

空いているスペースにバッグを置かせてもらいながら、今しがた少しだけ気になったことを聞いてみる。


「朝羽さん、皆から“霞さん”って呼ばれてるんですか?」

「あぁ、霞浦総支配人って長くて呼びづらいだろうから、好きなようにどうぞと社員に言っているんです。ここの皆は特にフレンドリーですよ」

「そうなんですね」


このホテルを総括する総支配人といえ、スタッフとの距離も近いらしい。

なんだか心が和んで笑みをこぼしていると、ほどなくしてガチャリとドアが開けられ、先ほどレジにいた女性ふたりが姿を現した。

通常、ベルソレイユは一日四人で回しており、従業員は全員で六人だと聞いている。このふたりは、今日は早番ということだろう。

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