ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「あーら、私たちシンデレラの意地悪姉さんじゃないんだから、そんなことしないわよ」

「誰かさんは姉さんって年でもないしね」

「梢ちゃん?」


つい先ほどと同じく、遠慮なく弄る水岡さんと、それに対して静かに睨み据える大石さんに、私は思わず吹き出してしまった。

どうやらふたりはこういうやり取りを楽しんでいるみたい。仲が悪いんじゃ、と一瞬心配してしまったけど、その逆のようで一安心だ。

明るく楽しく働けそうな職場の雰囲気にも安堵し、いいスタートを切れそうな気がした。


そうして、朝羽さんは『また後ほど来ます』と告げてオフィスに向かっていった。これから幹部とのブリーフィングや、スケジュール確認を行うのだという。

私はひとまず商品の陳列を手伝い、チェックアウトの時間帯で混み合う店内の様子を、少し緊張しながら肌で感じていた。


十時半を過ぎ、人の波もだいぶ落ち着いた頃、館内を巡回していた朝羽さんがやってきた。

これからチェックインまではアイドルと呼ばれる時間帯で、比較的お客さんが少ないため、売り場のディスプレイを作るのにベストらしい。

私を呼んだ朝羽さんは、ショップの入り口付近の一番目につく棚の前でさっそく説明を始める。

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