ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜

軽く焦り始めるも、とりあえず水岡さんの電話が終わるまで間を持たせようと、自分が知っている英単語を並べてみる。


「ワ、ワンモア、プリーズ……？」


それだけで私の英語力がどのくらいかわかったらしく、ブロンド美女は苦笑いを浮かべ、身振り手振りを交えてゆっくり話してくれる。しかし、それでもいまいち汲み取ることができない。

どうしよう、このままじゃ彼女の気分を害してしまう……！

軽くパニックに陥りそうになりつつ、とりあえず曖昧な相づちを打って聞いていたそのとき、私の横にスッと誰かが現れた。


「Can I help you with something？」


低く艶のある声で流暢な英語を口にする人物を見上げ、息を呑む。

その人は胸に総支配人のネームプレートを光らせる、朝羽さんだったから。

頼もしい空気を醸し出す彼の登場で、白人女性は安心したように笑って話し出す。ふたりの間で交わされる会話はまったくわからず、私は目をしばたたかせるだけ。

すごい……朝羽さんってこんなに英語が上手だったんだ。

確か、大学を卒業してから二年間海外のホテルに勤務していたらしいから、英会話もできて当然だろうけど、話している姿は初めて見たからなんだか感激する。