ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
いつものクールな表情になってフォローしてくれた彼は、「私も指導が足りませんでしたが」と、話を続ける。


「最低限の英語は知っておいたほうがいいですね。あと、相手の言っていることがわからないのにとりあえず頷く、というのは絶対にやってはいけません。相づちを打っているだけで、理解しているのだと誤解されてしまいます」


淡々とされる注意が、胸に突き刺さる。肩をすくめ、「はい、すみません……!」と、もう一度しっかり頭を下げて謝った。

わかってはいたけれど、私の対応は不誠実なものだった。完全に勉強不足だ。

自分への落胆と、少しの恐怖に似た感覚が入り混じる。

朝羽さんが無表情なのは普段通りだけれど、その中に厳しさが窺えるから。内心怒っているのかもしれない。

自分が不甲斐なくてシュンとする私に、なにかを言おうとしたらしい彼が口を開きかけたとき、スタッフルームのほうから水岡さんがやってきた。


「ごめんね、初音ちゃん! あ、霞さんもいらしてたんですね」

「えぇ、巡回に。なにか変わったことはありませんか?」


水岡さんに視線を移す朝羽さんは、穏やかな表情に戻っている。それだけで、なんだか胸がシクシクと痛んだ。

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