ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
彼は軽く状況を確認し、フロアの巡回に戻っていく。肩を落としてその姿を見送る私に、水岡さんが少しだけ心配そうに尋ねる。


「大石さんから聞いたけど、今外国のお客様が来たって? 大丈夫だった?」

「はい、ちょうど朝羽さんが来てくれたのでなんとか」


ヘコんだ気持ちはすぐには戻らないものの、笑顔を作って答えた。些細な失敗でいつまでも落ち込んではいられない。

そんな私をじっと見ていた水岡さんは、少しの間を置いてこんなことを言う。


「ね、今日はここのカフェでランチしない? 私おごるからさ」

「えっ! いえ、そんなおごるだなんて」

「いいから。歓迎会もまだだし、初音ちゃんこのホテルのお店行ったことないんでしょ?」


確かにカフェには行きたいけれど、ごちそうしてもらうのは気が引ける。お値段がいくらくらいなのかもわからないし。

遠慮して何度か同じようなやり取りをしたあと、結局水岡さんに押し切られて、お昼休憩は少々リッチなひとときを過ごすことになった。


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