ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「えっ、水岡さんが?」

「梢でいいわよ」


彼女がふっと笑ってそう言った直後、前菜からデザートまでワンプレートに乗せられた可愛らしいランチが運ばれてきた。

一旦そちらに意識が逸れ、感嘆の声を上げた私たちは、とりあえずいただくことにする。

ちょっとずつ、たくさんの種類の料理を楽しんで味わっていると、梢さんは海老のサラダにフォークを刺しながら、話を続きに戻す。


「私、一応英文科は出てるけど、ネイティブの発音が全然聞き取れなくって。悔しい思いもいっぱいしたわ」

「そうだったんですか」

「うん。でも、何度も英語を聞いたり口に出したりしてるうちに、いつの間にか理解できるようになってた。結局慣れるしかないってことね」


わずかに眉を下げて笑う彼女の経験談を聞き、やっぱり朝羽さんも言っていたように慣れが大事なんだな、と納得して頷いた。

苦戦していたのは私だけじゃないんだと思うと、なんだか心強くなる。


「よく使う大事な英文をいくつか覚えておくだけでも違うと思うわよ。あとで教えてあげる」

「ありがとうございます!」


梢さんのありがたい言葉で、私はさらに気持ちが軽くなり、笑顔でお礼を言った。

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