ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
いつか誰かを頼らなくても英語で接客できるように、少しずつ勉強していこう。朝羽さんにも失望されたくないし……。

先ほどかいま見た、彼の厳しい表情を脳裏に蘇らせながら、リゾットをスプーンですくっていると、梢さんがなにげない調子で言う。


「霞さんはペラペラだから、初音ちゃんも気後れしちゃうでしょう。英語だけじゃなくて中国語もできるっていうんだから、すごすぎよね」

「そっ──!」


そうなんですか!?と思わず声を上げそうになり、慌てて口をつぐんだ。婚約者の私が知らないなんておかしいもの。

キョトンとする彼女にへらっと笑ってみせ、「ほ、ほんとすごいですよねぇ」と言い直した。

そうか、朝羽さんって本当に語学堪能なんだ。きっと相当な苦労をしただろう。ホテル経営を学びながら、多国語も勉強していたということなのだから。

彼の並々ならぬ努力を崇めたいくらいの気持ちになっていると、梢さんも似たようなことを考えていたのか、感心した様子で語り始める。


「あの若さで総支配人なんて、日本ではなかなかいないんじゃない? 普通なら各部門のマネージャーを何年も経験してからやっと総支配人の座に就くのに、霞さんは学生時代にビジネスとしてのホテル業を学んでるから、すっ飛ばしちゃえたんだもんね」

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