ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
ゼロに等しい今の自分の英語力では、いつになったらそうなれるのか見当もつかない。でも、目標は大きく持っておこう。

恥ずかしげもなく宣言すると、彼は私を優しげな眼差しで見つめて頷いた。


「最初は間違えても、つっかえてもいいから、気持ちを込めて大きな声ではっきり言えば、誠意は伝わる。俺も教えてやれるから、わからないところはなんでも聞いて」

「はい。頑張ります、先生」


心強いアドバイスをしかと受け止めつつ、軽く笑ってみせた。

私をじっと見つめ続けていた朝羽さんは、ふいとその視線を逸らし、おもむろにキッチンのほうへと歩き出す。

なんとなくその姿を目で追うも、もう少し勉強しようと再び紙に視線を落とすと、手前のガラステーブルの上にコトリとなにかが置かれた。

見覚えのある、緑色の小さな瓶。白銀のラベルには、上品に“花曇り”と書かれている。

これは、飛高酒蔵で作っているにごり酒だ。きめ細かな微発泡で、まろやかな口当たりの、私も大好きなお酒。

私は目をしばたたかせて、朝羽さんに問いかける。


「えっ、これ、どうしたんですか?」

「……なんとなく、あなたにあげたくなって」

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