ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
そうして、春の陽だまりみたいに柔らかな眼差しが私を捉える。


「俺も、初音のこと、もっと知りたい。教えて?」


一気に縮まった距離とともに、声色も急に甘くなったように感じ、胸が高鳴った。

目標を達成するための提案にただ乗ってくれるだけじゃなく、私のことも知ろうとしてくれていることが、こんなにも嬉しい。

自然と笑顔がこぼれ、あっさりと気分が明るくなった私は、さっそくお猪口をふたつ用意する。

そうして、ゆっくりお酒を味わいながら、少し夜更かしをしていろいろな話をした。心の霧が綺麗に消えていくのを感じながら。


 *


それから私たちは、時間があるときは日本酒をお供に、お互いの話をするようになった。

学生時代は弓道部で、勉強が煮詰まると道場でストレスを発散していただとか、その頃からの友人がベアティチュードのバーで働いているとか。少しずつ、朝羽さんの知識が増えていく。

三月も下旬になり、桜が咲き始めた頃には、彼に関することを書き記した頭の中のノートはだいぶ厚くなっていた。

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