彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)



「・・・こんばんは。」



無難な挨拶をしてみる。



「こんばんは・・・。」



返事は返ってきた。

無理に戦わなくても、やり過ごす手もあるかも。

会釈して通過しようとしたら。



「公園で・・・」

「え?」

(公園?)



そのキーワードで気づく。



「あの時のホームレスさん?」

「ああ・・・」



ちーちゃんと待ち合わせた時に、助けたホームレスだった。

臭いにおいはしなかったけど、服装は相変わらずだった。



「お久しぶりですね。怪我は大丈夫ですか?」

「打撲だけだったから・・・」



私の問いかけに、ボソボソと返事をする。

前髪が長くて顔は見えないけど、年齢は20代後半ぐらいかな?



「ありがとう。」



そんなことを考えていたら言われた。



「坊やにお礼を言いたくて、探していたんだ。」

「え・・・?」



ちょっと驚いたけど、嬉しかった。



「いいですよ、そんな。ご無事で何よりです。」



(見た目は怪しいけど、悪い人じゃないみたいね・・・?)



様子をうかがいながら見ていたら言われた。



「坊やは・・・暴走族なのか?」

「そうですが?」



私の返事に、少し間を置いてから相手は言う。



「そうには見えないが・・・」

「よく言われます。」



私の言葉に、男は視線を逸らす。

そして、近くの縁石に腰かけた。

私も立ちっぱなしはツラいので、彼の隣に腰を下ろした。

涼しい風が頬をなでる。



「久しぶりだな・・・」

「え?」

「誰かが、隣に座るのは。」

「そうなんですか?」

「こんな汚い男の横に座る奴はいないさ。」

「・・・会長さんとは会われましたか?」

「ああ・・・福祉の申請をすすめられた。」

「受けるんですよね?」

「いや・・・今の生活が良い。」

「え?・・・そうですか。」



今がいいって・・・変わってる。



(普通は、援助を受けると思うけど・・・?)



疑問に思ったけど、根掘り葉掘り聞くのも悪いので話題を変えた。



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