彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
「そういえば、お名前をうかがってませんでしたね?」
「ダメな大人の名前なんて覚えなくていい。」
「ダメかどうかは僕が決めます。教えて頂けないんですか?」
「・・・丸山。」
「丸山さんですか。僕は凛道蓮と申します。みんな、凛と呼んでます。」
「『チョコ』は・・・あだ名か?」
「あははは、そうなんです。好きに呼んで下さい。」
「じゃあ、チョコ。」
「はい。」
「・・・変な子だ。」
「よく言われます。」
ニコッと笑いかければ、少しだけ口元をゆるめた相手が言った。
「あんな風に言われたのは、初めてだったな。」
「『あんな風』?」
「助けてくれたこともだが・・・・『普通に接してくれてこと』だ・・・・ありがとう。」
「いえ、そんな・・・」
見た目は怪しいけど、彼の発する言葉はきれいな気がした。
嘘のない言葉に気恥しくなる。
「礼をしたいが、金もない。」
「いいですよ。」
「何かできることはないか?」
「そう言われましても・・・・あ、そうだ。」
丸山さんの提案で思い出す。
「この子、見たことないですか?」
丸山さんに、携帯画面を見せる。
表示したのは、なずなちゃんの画像。
これに相手は首を横に振る。
「・・・知らないな。チョコの知り合いか?」
「僕は知ってますが、相手は知らないです。」
「なんだ、それ!?知り合いじゃないのか!?」
「彼女のお姉さんとは、知り合いです。僕は画像でしか、この子を知りません。」
「世間ではそれを他人と言うんだよ!」
「そうかもしれません。僕の関係者ではないのですが、家出人なんです。」
「家出?」
「はい。2週間前からご家族が探しているんですが、見つからないんです。僕にも探すように頼まれたんです。名前は春野なずなちゃん、中学二年生です。」
「家はこの辺りか?」
「いえ、他県から来ています。友達も親戚もいないので、土地勘もないはずだからすぐに見つかると思われたのですが、未だに見つからず・・・」
「いつからいなくなったんだ?」
「2週間前からです。」
それを最後に黙り込む丸山さん。