彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
薄暗い路地で怒られた。
「危ないじゃないか!!」
「えーと・・・」
私の目の前には、肩で息をしながら怒るホームレスさんがいた。
というか、私を囲むようにして、それらしい人達が数人いる。
そんな彼らを筆頭にして怒っているのが、私をここまで連れてきた人。
「あの、丸山さん・・・」
「聞いてるのか!?」
「聞いてます・・・」
(この人、大声出せるんだ・・・)
女装した瑞希お兄ちゃんと話していたら、突然、知り合いのホームレス・丸山さんが現れた。
怒鳴り声がして、瑞希お兄ちゃんがびしょぬれになったと思ったら、私は抱えられて連れさらわれた。
(・・・あれ?これって、誘拐とも言えるのかな?)
〔★拉致(らち)とも言える★〕
とりあえず、どうしてこうなったのか聞こうと思った矢先に言われた。
「相手が女だったとはいえ、襲われてどうするんだ!!?」
(え?)
その言葉で、もしかしてと思う。
「助けて・・・くれたんですか?」
心外だけど、瑞希お兄ちゃんを悪い大人と勘違いして、私を救ったつもりでいるのかしら?
「そうだよ!あの辺りは、幼児趣味の奴らがたむろしてる場所なんだぞ!?」
どうやら、そうらしい。
「知らなかったのか!?」
「今知りました。」
「危ないな!」
吐き捨てるように言われ、複雑な思いになる。
私を助けるために、瑞希お兄ちゃんに水をかけたのね・・・
瑞希お兄ちゃんに水をかけた件、抗議したいけど・・・
「危ないことするんじゃないぞ?いいな?わかったな?」
「は、はい・・・」
善意でしてくれたので注意できなくなった。
怒れない。
だから、びしょ濡れの好きな人を見せてくれたことに感謝した。
〔★怒る気がないだけだ★〕