彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
「イオリン、今のはよくない!凛ちゃんのことを道具みたいな言い方して!あたしもその作戦・・・よくないと思う。」
「何を言う。俺は凛道を道具扱いしてなどいない。この際だから言っておくが、凛道をローストビーフにしようとした時点で、俺は九条アキナに愛想をつかしている。」
「伊織!?」
思わず名前を呼べば、目だけで俺を見ながら淡々とした口調で言った。
「たった1度の罠で終わるならば、凛道の命が保障されるならば、凛道にも危険な橋を渡らせるしかない。アキナをお可哀想だからといって同情して、命をくれてやるほど俺は善人じゃない。」
そう語る伊織は笑っていた。
良い意味の笑顔ではない。
その笑みは、嫌いになった者をいたぶる時の顔だった。
「『瑞希の弱みが凛道』だとアキナにバレている以上、凛道を隠してばかりはいられんぞ?巻き込んでしまった俺達にも責任はあるが、逃げてばかりでは終わらない。違うのか、瑞希?」
「・・・・それは、わかって・・・!わかっては、いる。」
伊織の言うことは正しい。
これは長引かせてはいけない問題だと。
「アキナは・・・・どうすれば、俺が・・・俺らが傷つくかわかってる。今後も、凛を殺す気でくるだろう。その証拠に凛は・・・・この間、焼け死にそうになった!」
血に染まった身体で、煙にまかれ、炎の熱に苦しむ姿。
「凛は何も言わないが、怖い思いをさせたのは間違いない。いろんなショックに、1人で耐えてると思う。俺に心配かけまいとして・・・・!」
死に直面してもなお、俺に助けてと言わなかった。
それどころか、『楽しい』とほざいて、笑顔のままで逝こうとした。