彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)



私と家出少女達を乗せた車は、繁華街に戻った。



「今日はセリの日だからラッキーだったぜ。」



ご機嫌な男達の声に合わせて車の扉が開く。



「来いよ!」



監視役の子に引っ張られながら降りる。



「お前は待て!坊主!」

「え?」



そんな声と共に、つまみ上げられる。



「顔を隠すな!」

「え!?」



それは困る!

瑞希お兄ちゃんの前でも控えているのに、貴様のような下種にさらすなんて冗談じゃないわ!



「マスクを取れ!」



そう言って伸びてきた手を払う。

アドリブでお芝居をする。



「嫌だ!パパが醜いから隠せって言われてるんだ!」



早口で、子供っぽくしゃべる。

演技した。



「はあ?いいから取れよ!」



額がくっつくぐらいまで顔を近づけながら言う相手。



「パパに言いつけるぞ!?」



(ぶっ!?どういう脅しよ!?)



笑いそうになるのを必死で我慢する。

知らない人から見れば、震えているように見えたかもしれない。



「ちょっと、たくちゃん~びびってんじゃん?」

「甘いんだよ、ちあきは!早く取れよ!」



なんとか笑うのを堪え、渋々ながらも少しだけマスクをずらした。

隠していた素顔をさらす。



「げっ!」

「きゃあ!?」



それで、私の両脇にいた女子が声を漏らす。



「お前その顔!?」

「ひどい傷・・・!」



なずなちゃんの言葉通りの見た目だったと思う。

徳さん力作の傷アート。



「うっわ・・・!」

「マジ・・・?」



見せろと言った男も、ほか仲間達も嫌な顔をする。



「虐待か・・・?傷もんじゃんか・・・」

「だから真夏なのに、アンダーシャツなのか?」

「ぶっ壊れてないよな?」

「お、おい!マスクはつけとけ。客受けが悪い!」



(うまくいったみたいね・・・)



マスクを戻しながらホッとする。

気味悪がるMESSIAH達を見て、顔にしてもらったペイントは大成功だと思う。

知らない人が見れば、あざだらけで、生傷の痛々しい顔かもしれない。



〔★凛は危険を回避した★〕




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