彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)



「大丈夫・・・?」



何も知らないなずなちゃんが、不安そうにのぞき込んでくる。



(気持ち悪いはずなのに・・・・優しい子だな。)



「大丈夫ですよ。」



笑顔で答えた時、なずなちゃんはつないだ手を握りしめてくれた。



「ブサイクじゃんか!詐欺!」



しかし、それとは反対の手はふりほどかれる。

そう言って、不機嫌そうな顔で監視役の子が離れてくれた。

ちあきはその足で、私をスカウトした金髪男の腕に手を絡めた。



(ずいぶん、距離が近いわね・・・)


「・・・気にしなくていいよ。」



それを見ていたなずなちゃんが、小声で教えてくれた。



「あっちが恋人らしいから。」

「そうなんですか?」



(彼氏がいるのに売春するって・・・理解できない。むしろ、愛があるなら彼女の身売りを止めるのが彼氏じゃないの!?)


「ほら、歩け!」



後ろからの声に、その言葉を飲み込んで進んだ。

案内されたのは、とてもきれいなお店の裏口。



「ここは一体・・・?」

「出会い喫茶だよ。」

「出会い喫茶?」



そっと耳打ちしてくれるなずなちゃん。



「中にマジックミラーの部屋があって、私達はそこでお客さんが選ぶの待つの。」

「詳しいですね・・・」

「何度も来てるから・・・」



何と言っていいかわからず、周りの目もあったので、彼女の手を強く握る。

それになずなちゃんもにぎり返してくれた。



「ほら入れ!」



羊を追い立てる犬のように、部屋の中に押し込まれる。

その瞬間、周りの女の子達が走り出す。

我先にと、必死の表情で部屋に入っていく。



「え?」

(なに??部屋に何かあるの?)



私の疑問はすぐに解決した。



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