彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
MESSIAHによる犯罪はニュースで放送された。
その飛び火が来るとは思っていなかった。
「じゃあ、君は坂口さんからもらった薬を返したんだね?」
「はい。」
机を挟んだ向かい側で、中年の刑事さんに聞かれてうなずいた。
お昼過ぎ、突然警察が家に来てびっくりした。
(凛道蓮がバレた!?)
瑞希お兄ちゃんの元への逃走も考えたが、すぐに違う理由だとわかった。
「刑事さん!うちの凛は、薬物なんてしません!口に入れる物だって・・・私達が気をつけてます!」
「落ち着いてください、お母さん。大丈夫ですから。」
坂口さんが押し付けた薬は、ちーちゃんが言った通りのドラッグだった。
(返しといてよかったけど・・・)
問題の坂口さんは、無事に家族の元に帰ったとだけ聞いた。
薬のことは塾の中でも噂になっていて隠せなかったけど、売春の方は噂になることもなかったのでホッとした。
とはいえ、事情を聞きたいからと私を含めた塾生達は警察署に集められた。
保護者付きで。
「念のため、検査を受けて頂きます。」
「凛を、娘を疑ってないんじゃないですか!?」
「これは、塾のみなさんにお願いしてることです。」
「わかりました!!凛、大丈夫だからね?」
「うん・・・」
坂口さんは、私以外にも薬を渡していた。
何人か飲んだ子がいるらしい。
幸いだったのは、坂口さんほどの中毒症状を出してないこと。
知らずに飲んだこのもその親も真っ青で、弁護士を探し回っているらしい。
警察も、情状酌量の処置をするとのうわさだ。
「凛、あの塾はやめましょう!」
「え?」
「あんなケチがついたところ・・・冗談じゃないわ!!」
「・・・わかった。」
(完全な八つ当たりね・・・)
悪いのは塾じゃなくて、薬をばらまいた坂口さんだと思うけど・・・。
こうして、夏期講習の途中だったけど、塾をやめることになった。