彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)



凍り付きそうな冷たい声でその人は言った。



「宿題を教えろというのは・・・」



ハードカバーの本を閉じながら告げる。



「凛道以外の、お前ら全員をか?」

「はい。」



その問いにうなずけば、メガネの麗人がため息をつく。



「凛道ではなく、その他の連中をか?凛道ではなくて?」

「獅子島さん、何故僕の名前を連呼するのです?」

「ふん!大事なことだから二度言っただけだ。」

「うはははは!つまり、凛になら教える気持ちがあったとい~ぶはっ!?」

「何か言ったか・・・!?」

「い、言えまへん・・・もがもが!」



目の前で顔をつぶされる友達。

しかし、獅子島さんが怖いので助けることは出来ない。



〔★わが身が大事だ★〕



「まさか、凛だけしか宿題が出来てないとはな~」

「瑞希お兄ちゃん!」

「びっくりだぜ。」

「僕もです!僕もあなたが今日、同僚と交代して、お休みだとは思いもしませんでした!」



お仕事でいないとあきらめていたのに、仲間のシフトを交代してお休みになってたなんて!



「瑞希お兄ちゃんがいてくれて嬉しいです!」

「伊織にも言ってやってくれ。」

「獅子島さんもいて、嬉しいです!」

「『も』とはなんだ、『も』とは?」

「獅子島さんがいて、嬉しいです!」

「まったく・・・」

「ははは!烈司達が聞いたら悔しがるぜ~」



その言葉通り、本日のフェリチータには瑞希お兄ちゃんと獅子島さんしかいなかった。

夕方になれば帰ってくるらしいけど、瑞希お兄ちゃんがいるのでどうでもいい。



〔★恋する乙女は残酷だ★〕




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