明日死ぬ僕と100年後の君

「有馬について。これ俺が言っていいことじゃないと思うし、言おうかどうか迷ったんだけど。有馬のためにも大崎さんのためにも、話しておいた方がいい気がして……」



持ち前の明るさではっきり物を言う柳瀬くんにしては、珍しく歯切れが悪い。

はっきり言ってよ、とわたしが続きをうながせば、ため息をひとつついてようやく話し始める。



「有馬の弁当って、実は有馬の母親が作ったものじゃないんだ」



一瞬何の話かわからなかった。

随分と重たい表情で語り出したのがお弁当についてだったから、バグが発生したみたいに処理するのに時間がかかった。



「……え? じゃあ、お父さん、とか?」

「いや。有馬の家族じゃない。作ったのはお手伝いさん」

「お手伝いさんて……有馬んち、お金持ちなの?」


お手伝いさん……つまり家政婦さん。いまは家事代行って言うんだっけ。

どれもお金をもらって、他人の家の家事をする人のことだ。

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