明日死ぬ僕と100年後の君
そういう仕事があることは知っているけれど、実際に利用している人にはいままで会ったことがない。
実は小説や映画の中にしか存在しない職業なのかもしれないとすら感じていた。
「まあ、金持ちっちゃ金持ちだな。祖父さんが有馬総合病院の医院長だし。でも金持ちだからお手伝いさんを雇ってるってわけじゃないんだ」
有馬総合病院と聞いて驚く。お母さんが働いている職場だった。
確かに有馬の名前だけれど、まさかそこの医院長の孫だとは思いもしなかった。
でもいまはそのことは置いておく。
それよりも、有馬自身について気になって仕方がない。
「じゃあ、どういう……?」
柳瀬くんは、普段バッドを持つ大きな手を、身体の横できつく握りしめた。
緊張を孕んだ黒い瞳が、じっとわたしを見下ろしてくる。
嫌な予感がした。
それはぞわぞわとわたしの肌の上を走り、あっという間に全身へと広がっていく。
「有馬の家族、みんな死んだから」