明日死ぬ僕と100年後の君

「それはわかってるけど……。隼人くんは宿題やりたくないって」


わたしが「ねぇ?」と傍らに立つ少年に同意を求めると、彼は鷹揚にうなずき紙の剣をぶんと振った。


「だって宿題つまんねーもん!」

「どうしてつまらないの? 宿題が難しい?」

「べっつにー。面倒くさいだけ。学校でベンキョーしてんだからさあ、いいじゃん。わかってるもん、俺」

「学校で勉強したことを、帰ってからもう一度やるのを復習っていうんだよ。復習するとね、しっかりと頭に入るんだ。何度もやれば、その分根付いて忘れにくくなるんだよ」



そう丁寧に説明する有馬は、きっと毎日予習復習をやっているんだろうなとわかる。

真面目にコツコツとやる人間の言葉は、わたしみたいなダメな奴には雑音みたいに聞こえて心には届きにくい。

それは不快なほどで、時には思わず耳を塞ぎたくなる。


隼人くんはどうだろう、と様子をうかがう。

生意気な少年は眉を寄せて、精一杯の不満を訴えていた。

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