明日死ぬ僕と100年後の君

「たなばたってなにー?」

「七夕っていうのは……えーと、なんだっけ?」


騒ぎ始める子どもたちにも、久保さんは焦ることなく説明を続ける。


「七夕は来月、7月7日のことだよ。1年に1度、織姫と彦星が天の川を渡って会う日なの。七夕に笹を用意して、ささやかな願い事を書いた短冊を飾ると、その願いが叶うって言われてるんだよ!」


さながら幼稚園の先生のように、優しく元気いっぱいに子どもたちに応える彼女に、さすが小さな兄弟がいるお姉さんだと感心する。

きっと家でもこんな風に、しっかり者のお姉さんをしているんだろう。

わたしにはどう頑張ってもマネできない。


姉のように、母のようにと思っても、わたしにはその手本となるような人がいなかった。

強いて言うなら、ひいばあだろうか。


ひいばあはいつだって、わたしの話をにこにこと聞いてくれていただけだったけど。

絶対に否定をしないひいばあの存在は、隣りにいてくれるだけでわたしの支えだった

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