明日死ぬ僕と100年後の君
「あ、わかった! 何を書くか迷ってるんでしょ? 願い事はひとつじゃなくてもいいんだよ~。全部が叶うかはわからないけど、願い事の数だけ短冊を作っていいんだよ!」
明るく前向きな久保さんらしい声かけにも、隼人くんは反応しない。
わたしにはその姿が、じっとなにかに耐えているように、そして傷ついているように見えた。
「ほらほら、何でもいいんだよ? かっこいいヒーローになりたいとか、メジャーでホームラン打ちたいとか。逆上がりができるようになりたいとかでもいいよ。カレーが好きならカレーを山盛り食べたいとかでもいいし。あ。カレーを好きなのはわたしなんだけどね?」
小さな肩が震えていることに、久保さんは気づかない。
彼女は弱ったな、というように眉を下げて隼人くんの隣りにしゃがみこんだ。
「うーん、思いつかない? それじゃあ一緒に考えてみようか。隼人くんの好きなものは確か……」
彼女の手が隼人くんの背に触れた瞬間、彼は勢いよく立ち上がり、椅子を蹴り部屋を飛び出していく。
すれ違う瞬間、前髪の隙間からのぞいたあのやんちゃそうな目には、涙が浮かんでいた。