明日死ぬ僕と100年後の君

「あー……思ってたんだけどさ。夢とかやりたいこととか、そういうのって、絶対持ってなきゃいけないの?」

「え……? 持ってなきゃいけない、とかじゃなくて。ただ、せっかく短冊を作るから願い事をと……」

「書ける人は、書けばいいよ。それが楽しい、わくわくするって感じる子も確かにいるんだろうし。……でも、願い事が書けないって、そんなに変かな。夢とか希望とかないと、生きてちゃいけないの? 宿題をちゃんとやったり、生活態度も真面目で、何事にも一生懸命にしてないと、生きる資格がないの?」



久保さんの肩越しに、聖人と呼ばれる彼を見て言った。


有馬は窓際に佇んだまま、黙ってこっちを見ている。

たぶん、わたしをじっと。


その顔からは思った通り、表情がごっそりと抜け落ちていた。



「人はみんな、色んな環境でそれぞれの事情を抱えて生きてる。何もしなくても幸せでいられる家に生まれる人もいれば、必死にがんばったって報われない状況から抜け出せない人もいる。ただ生きてるだけでもしんどいのに、それは罪だって、そんなの人間のクズだって……。そう言われてるみたいで、嫌になる」

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