明日死ぬ僕と100年後の君
怒っている。
有馬が静かに、怒りをぶつけてくる。
わたしは何がなんだかわからないまま、それを正面から受け止めるしかなかった。
「君が何を考えてそんなことを言ってるのか知らないけど、僕には関係ない。僕は人の役に立って、はじめて命を代わりにもらう資格を得るんだよ。それがなきゃ、僕はただ人の命を奪う化け物だ」
「化け物ねぇ……。ま、そりゃそうだろうな」
猫がひと鳴きし、有馬の腕の中から飛び降りる。
まるで気分を害したというように、そのまま小走りでどこかへと去っていってしまった。
「楽に生き永らえたいなんて思ってない」
ハッとして、猫から有馬へと視線を移す。
ああ、そうか。
わたしが偽善だとバカにしていた行為はすべて、有馬自身の心を守るものだったんだ。
生存本能と防衛本能。
そのふたつで確立されたボランティア活動は、有馬の命に直結している。
他人が親切ぶって口出ししていい領域じゃなかったのだ。
「君の命の価値は、ひどく軽いんだね」
軽蔑するように言われて初めて、有馬の心が見えた気がした。
有馬は不真面目に生きるわたしに苛立っていたわけじゃない。
命を軽んじて生きているわたしが、誰より何より、憎かったのだ。