明日死ぬ僕と100年後の君
特に意図があったわけじゃない。
ただ、吐き出したかったのだ。
ひいばあはたぶん眠っていた。目を閉じて、時折舟をこいでいた。
聞こえていないのをいいことに、洗いざらい吐き出してしまう。
おばあちゃんは黙々とひいばあの身体を清めていく。
けれどわたしが話し終わると、フンとひとつ鼻を鳴らした。
「だからあたしは、ばーさんを施設に入れるのは反対だって、ずっと言ってただろ。家族が介護をするのも大変なのに、誰が好きこのんで他人の面倒をみたいと思うかね」
老人用のオムツを外し、薄っぺらいひいばあのお尻を拭きながら言われ、黙りこむ。
ひいばあのオムツ替えに慣れるまでには、随分時間がかかったことを思い出した。
「だいたいね、自分が入りたいと思えない施設に、実の親を放りこめるかい?」
言葉を選べず、ただ首を振る。
ひいばあも、おばあちゃんも、お母さんも。
今日の施設に入れたいとは、きっと一生思えないだろう。
どれだけ介護が大変だったとしても、もう面倒みきれないと匙を投げたくなったとしても。
最後の最後には踏みとどまってしまう気がした。