明日死ぬ僕と100年後の君
おばあちゃんは勢いよく振り返る。
間近で祖母の傷ついた顔を見てしまい、後悔した。
なんてバカな質問をしてしまったんだろう。
「ごめん……」
「……くだらないこと考えて、自分の道狭めるもんじゃないよ。どんな道にだってね、寂しさもありゃあ、喜びだってあるんだから」
祖母にしては力なく言って、洗面所に向かうその背中を見つめる。
いつの間にか、こんなにも細くなっていたのか。
確かに年齢よりはずっと若い。
それでも、老いないわけじゃない。
人よりもだいぶ緩やかに、死は近づいている。
どんな人でもいずれ死ぬ。
その事実だけは平等で、長さや過程はどこまでも不平等だ。
部屋を出ていく背中に「じゃあおばあちゃんはいま、喜びを感じてるの?」と問いかけることは、出来なかった。