明日死ぬ僕と100年後の君
ようやく女性を轢いただろう車から、運転手の老人がよろよろと降りて来きて。
その人もいまにも死にそうな顔色をしていた。
車のボンネットの凹みはすさまじく、事故の衝撃を物語っていた。
「誰か、救急車を呼んでください!」
有馬の叫びに、誰かが「電話しました」と答える。
その間も、女性の傍らで女の子は泣き続けていた。
パシャリと真横からシャッター音がして、我に返った。
よく見ると、周りにいる野次馬のほとんどが、横断歩道に向かってスマートフォンを向けている。
その時沸き上がった感情は、悲しみだったのか、怒りだったのかわからない。
とにかくやるせなく、苦しかった。
気づけばガードレールを乗り越えて、女の子の元に駆け寄っていた。
「お嬢ちゃん、大丈夫? ケガはない? どこか痛いところは……」
「お、おかあさん……いたい」
小さな身体ががくがくと、引きつけでも起こしたように震えている。
母親の事故を直接目の当たりにしたこの子の衝撃は、計り知れなかった。
「おかあさん、ち、いっぱい。いっぱいいたいの……っ」