明日死ぬ僕と100年後の君

パタパタと走りながら、わたしに気付いて「いくる!?」と素っ頓狂な声をあげる。


「あんた、こんな所で何やってるの」

「ええと。いま手術中の人の事故に居合わせて。救急車に乗って一緒に来たの」

「赤の他人のあんたが?」


いぶかし気に顔をしかめられ、肩をすぼめる。

お母さんの責めるような瞳が苦手だった。


「小さい子がいたし、それに……有馬もいたから」


そこではじめてお母さんはわたしの横の存在に気付いたようだった。

「有馬?」と俯いたまま反応しない少年を見て眉を寄せる。



「もしかして、院長のお孫さん?」

「うん……そうみたい」

「いくると同じ高校だったのね。事情はわかったけど、あんたはもう帰りなさい」

「えっ。で、でも……」

「でもじゃないの。事故にたまたま居合わせたんだとしても、あんたは部外者でしょ? ここにいる意味ある?」


その聞き方はひどいと思った。

意味があるかないか。それだけで言えば、ない。確かにない。


けれど人は意味のあることばかりする生きものじゃないのだ。

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