明日死ぬ僕と100年後の君
◇生と死の接収
✽
小さな緑の庭を背に、ひょっこり顔をのぞかせたのはお母さんだった。
白いシャツに、細身のブラックジーンズを履いたお母さんは今日は非番で、化粧っけが薄い。
その姿はいつもよりさらに、5つほど若く、いっそ幼く見えるほどだった
「母さん。葬儀屋さん1時間くらい遅れるって」
呼ばれたおばあちゃんは、お母さんの方を見ないまま、気の抜けた声で返す。
「そうかい。まあ、急ぐこたぁないよ」
「……珍しいじゃない。母さんがそんなこと言うの」
「だってもう死んじまったんだからね。……ああでも、夏場はあんまり時間が経ちすぎると、腐っちまうからまずいか」
身も蓋もない言い方にお母さんは呆れた顔をすると、電話の相手に「大丈夫です」と伝え廊下に出ていく。
その背を目で追い、すぐに視線をベッドの上に戻した。
そこでは今日も、ベッドの住人が眠っていた。
ひいばあが安らかな顔で、眠りについている。
小さな緑の庭を背に、ひょっこり顔をのぞかせたのはお母さんだった。
白いシャツに、細身のブラックジーンズを履いたお母さんは今日は非番で、化粧っけが薄い。
その姿はいつもよりさらに、5つほど若く、いっそ幼く見えるほどだった
「母さん。葬儀屋さん1時間くらい遅れるって」
呼ばれたおばあちゃんは、お母さんの方を見ないまま、気の抜けた声で返す。
「そうかい。まあ、急ぐこたぁないよ」
「……珍しいじゃない。母さんがそんなこと言うの」
「だってもう死んじまったんだからね。……ああでも、夏場はあんまり時間が経ちすぎると、腐っちまうからまずいか」
身も蓋もない言い方にお母さんは呆れた顔をすると、電話の相手に「大丈夫です」と伝え廊下に出ていく。
その背を目で追い、すぐに視線をベッドの上に戻した。
そこでは今日も、ベッドの住人が眠っていた。
ひいばあが安らかな顔で、眠りについている。