明日死ぬ僕と100年後の君
いつも見る寝顔と変わらない。
そのうちゆっくり目を開けて、いつものように「お腹空いたあ」と言い出しそうな、そんな寝顔。
けれどひいばあはもう目覚めない。
二度とあの灰色がかった丸い目に見つめられることはない。
ひいばあは、永遠の眠りについたのだ。
悲しい。とても悲しい。
けれどどこか、ほっとしている自分もいた。
これでもう、ひいばあは解放されたんだと。
長寿の呪いから解放されたんだと。
お母さんやおばあちゃんの、冷たい緯線や言葉にさらされることはなくなったんだと、安心している。
そのせいか、涙は出なかった。
もうひいばあと話すことは出来ない。
あの柔らかな笑顔を見ることは出来ない。
それはとても悲しいのに、どうしても涙が出てこないのだ。
おばあちゃんも泣いていなかった。
けれどとても、意外なほど、落ち込んでいる。
ひいばあの傍らに、背中を丸めて座っているおばあちゃんは、一気に十歳は老けたように見えた。
疲れや、苦労や、深い悲しみが、いっぺんにおばあちゃんの身体に圧し掛かったように。
「……死ぬってのは、あっけないもんさね」