明日死ぬ僕と100年後の君
ぽつりと、静かな部屋におばあちゃんの呟きが落ちる。
とっくに冷たくなったひいばあの手を、おばあちゃんは布団から出して握る。
優しくさすって、握る。
ふたりの手はそう変わらない。
どちらも骨ばって、乾いて、厚みがない。
苦労を知っている手。
ちがうのはただ、温度だけ。
温かいか冷たいか。それだけだ。
「うちの家系はみんなそうだ。どれだけ長生きしても、みんな死ぬ時はぽっくりいっちまう。苦しまずにね。それだけが救いさ」
微かに笑ったおばあちゃんの横顔は、悲しげだけれど穏やかだ。
おばあちゃんもまた、何かから解放されたひとりなのだとぼんやりと思う。
「おばあちゃん……。おばあちゃんの旦那さんも、わたしのお父さんも、そうだった?」
「ああ……あんたのお父さんは、そうだね。あたしの旦那は、少し苦しかったかね……」
古びた木の天井を見上げるおばあちゃん。
何かを思い出そうとするその様子に、わたしも同じように天井を見た。
けれどそこには、顔のようにも見える不気味な模様が浮かんでいるだけだ。