明日死ぬ僕と100年後の君

「誰かが死ぬたび、考えちまう。この人は幸せだっただろうかってね。それで後悔するんだ。ああしておけば、こうしておけば。もっと何かできたんじゃないか。後悔するってわかってんのに、やっぱりまた後悔してるんだから救えないよ」

「おばあちゃん、後悔してるの?」

「ああ、そうさ。後悔の海に沈んでるよ。こりゃあしばらく上がっちゃこられないね」


冗談めかしてそう言うとまた、ベッドに視線を戻し、ため息をつく。


「あたしは出来た人間じゃないからね。どっちかっていうと、全然ダメだ。この年になっても人間がまるで出来てない。器が小さくて嫌になるよ。もっと大きな人間になれりゃあ良かったんだけどね。この人みたいにさ」


そう言うおばあちゃんの声には、どこか誇らしげな響きがあった。


「この人ね、ぼんやりして見えて、実は若い時はけっこうな舞踊家だったんだよ」

「ぶようか……?」

「日本舞踊のことさ。そりゃあきれいでね。お弟子さんもいっぱいいた。でもね、ある日娘をかばって事故に遭い、足を悪くした。踊れなくなって、お弟子さんも繋がりのあるお教室に振り分けて、すっぱり辞めちまったんだ」

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