明日死ぬ僕と100年後の君
はじめて聞くひいばあの過去。
なんだかわたしの知らない、赤の他人の過去話を聞かされているような気分になる。
それくらい、わたしの知っているひいばあのイメージとはかけ離れていた。
驚くわたしを横目で見ると、おばあちゃんは口元を微笑みの形に変えた。
まるで小さないたずらを成功させた子どもみたいな笑い方だ。
「自分のせいで母が踊れなくなったと泣く娘に、この人は言ったよ。舞踊のお役目が終わったから、これでゆっくり母親業に専念できるってね。強がりなんかじゃなく、心からの言葉に聴こえた。なんせそう言った時、晴れ晴れとした顔だったからね」
「それ……もしかして」
おばあちゃんは微笑んだまま、うなずく。
信じられない気持ちで、おばあちゃんとひいばあを交互に見た。
実の親子なのに、あまり似ていないふたり。
そう、親子。
わたしにとっては祖母と曾祖母だけど、ふたりは親子だ。
おばあちゃんがひいばあのことを、「お母さん」と呼んでいた時期もあったんだ。
「だからね。この人に介護が必要になった時、あたしは迷わなかったよ。今度はあたしの番だと思った。やっと恩が返せるって、晴れ晴れとした気持ちだったね」