明日死ぬ僕と100年後の君
涙が出た。やっと出た。
どこかでつっかえていた涙が、これまでの時間を引き連れ溢れ出す。
しわの多い手に頭を撫でられ、鼻をすする。
泣けた。泣ける自分が嬉しかった。
「それにね、あんたのお母さんだってそうだよ」
「お母さん……?」
「自分勝手な子だけど、あんたの為に毎日仕事をがんばってるだろ。旦那が死んだ時、言ってたからね。仕事に復帰する。この子のために、死んだ旦那のぶんもがんばって稼ぐんだって。再婚を何度もすすめたけど、あの子は聞き入れなかった。ばーちゃんに似て、頑固で自分勝手だからね」
あんまり自分に似て腹が立つから、嫌味もたくさん言っちまった。
そう言って悪びれないおばあちゃんに、泣きながら笑ってしまう。
「いくる。あんたもせっかく生まれたんだから、好きに生きな。でも、家族は大切にするんだ。ああ、ばーちゃんたちのことじゃないよ。いくるが将来自分の家庭を持ったらって話だ。まあこんなこと言わなくたって、あんたは優しい子だからね。家族を大切にするんだろう。それでいい。あんたが家族を大切にしていれば、子どもも同じようになる。それでいいよ」