明日死ぬ僕と100年後の君
「ほんとにたいしたことないよ。ただの思い出し笑い」
「でもいま大崎先輩、すっごく可愛く笑ってましたよ! 思い出し笑いっていうなら、どんな素敵なことを思い出したんです? 気になる~っ」
興味津々といった様子で詰め寄られ、たじたじになる。
まだまだ人との距離がうまく測れないわたしだけれど、久保さんに日々教えられている感じだ。
でもこの間、美咲たちに「いくるちょっと変わったね」「話しやすくなった」と言われ、嬉しかった。
人を明るい気持ちにさせるこの子のように、わたしもなりたい。
その時部室の扉が開かれ、同時にカーテンが大きく広がった。
正面から春の風をあび、柔らかな前髪を躍らせたのは。
「あ、部長! 待ってましたよ!」
久保さんが笑顔をふりまき、立ち上がる。
「やあ。ふたりとも、もう来てたんだ」
そう言って微笑む有馬は、去年に比べ少し背が伸び、体つきもたくましくなった。
穏やかな雰囲気は変わらないけれど、ふわりと風に吹かれてどこかへ飛んでいってしまいそうな儚さはなくなった。
代わりにしっかりと地に足をつけた、頼もしい雰囲気がいまはある。
もう天使の羽は、似合わないかもなあ。
「大崎さん? どうかした?」