明日死ぬ僕と100年後の君
制服のシャツのボタンを外し、胸元を引っ張る。
空気のいれかえをして涼もうとしたのに、入ってくる空気もまた熱く、あまり意味をなさなかった。
5月の終わりにもなれば、気温は30度近くになる日が続く。
いつの間にか春は夏に浸食され、消えかけていた。
「どうして言っちゃうかなあ」
帰り道、有馬と並び歩きながらそうごちる。
あれから久保さんを落ち着かせるのにかなり時間がかかった。
「そうだったんですか!?」「どうして言ってくれなかったんですか!」と、何度も繰り返し怒られた。
あまりの気まずさに、早めに部活を切り上げようと有馬に頼みこんだほどだ。
「別に隠すようなことじゃないだろ?」
「そんな簡単に言わないでよ。だって、久保さんは有馬のことが……」
言い淀むわたしに、有馬は顎に手を当て大きくうなずいた。
「はあ、なるほど。そういうことか」
「そういうこと?」
「大崎さん、それちがうから。久保さんは別に、僕のことをそういう風に見てるわけじゃないよ」