明日死ぬ僕と100年後の君
あきれたように言われ、むっとする。
まるでわたしが、なにもわかっていないみたいじゃないか。
「なんで有馬にそんなことが言えるわけ?」
「だって彼女が好きなのは、柳瀬だからね」
さらりと言って、有馬がわたしの前を歩く。
何を言われたのか一瞬わからなくなり、足を止めた。
坊主頭の色黒少年の笑顔が浮かび、慌てて有馬を追いかけた。
「えっ。ええ!? や、柳瀬くん!? うそっ」
「ほんとだよ。すでに告白したらしいんだけどね。野球に集中したいからって断られたそうだよ。でも彼女、めげない子だからね。柳瀬が引退するまで待つつもりらしい。健気だよね」
冗談を言っているようには見えない。
本当に、久保さんは柳瀬くんのことが好きらしい。
ちっとも気づかなかった。
だってふたりとも、そんな素振りはまったく……あれ? なかっただろうか?
言われてみれば、と思うような場面がいくつか浮かんできて、複雑な気分になる。
「全然、知らなかった。有馬も久保さんのことが好きなんだとばかり……」