明日死ぬ僕と100年後の君

あの歩道橋からの落下のケガで、有馬は3ヶ月ほど入院生活を送った。

一時は集中治療室で生死の境を彷徨った彼も、いまではこうして元気に、普通の生活を取り戻している。

退院後はしばらくリハビリを続けたけれど、幸い後遺症もなく、ボランティア活動にも復帰できた。


病院で目覚めた時、すでに事故から5日が経過していた。

その間もちろん、有馬は他人の命を食べることが出来なかった。

それなのに、生きている。

その事実をなかなか信じられず、有馬はしばらく混乱している様子だった。


しかも有馬から、あの残酷な力が消えていたのだ。

人から1日分の命を奪う力が。

誰かに親切にしても、あの光る玉は有馬には出せなくなった。


つまり、もう食べられない。

けれど有馬は生きた。


そして1日しか持たないはずの有馬の命は、今日も続いている。



理由ははっきりとはわからない。

けれどお互い、きっとこういうことなのだろうという、確信に近い答えは持ち合わせていた。

< 296 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop