明日死ぬ僕と100年後の君
でもきっとそんな良い子も、誰かの為になんてくだらない建前を公言しながら、ボランティア活動をしているんだ。
良い子ってなんだろう。良い人ってどういうことを言うんだろう。
本音なんてどうでもいいんだろうか。建前さえ完璧で、本音を誰の目にも触れないよう隠しておけば、それで善意は成立してしまうんだろうか。
久保さんの姿が見えなくなり、有馬の姿を探して振り返る。
ボランティア部の聖人は、赤い法被のおじさんとにこやかに何か話をしていた。
今日の報告とか、次回のボランティアについてだろうか。
鼻筋の通ったきれいな横顔は優しげで、おじさんもすっかり気を許した様子で楽しそうに喋っている。
あのおじさんも、いずれ聖人の信者になるのかもしれない。いや、もうすでになっていそうだ。
ふたりを眺めながらそんなことを考えていると「ナーン」と小さな声がした。
ふと足元を見ると、わたしの横に不思議な毛色の失礼な猫がちょこんと座っていた。