明日死ぬ僕と100年後の君
「あんた……おっさん、だっけ。本当にいつの間にか消えて、いつの間にかいるんだね」
まあ猫というのは気まぐれな生き物だ。
懐いていても、飼い主にべったりというわけでもない。そういうところがまた魅力なのだ。
いまなら触らせてもらえそうだと思い、そっと手を伸ばす。
小さな頭に触れてみると、猫はおとなしく座ったまま動く気配がない。本当にきまぐれだ。
柔らかで温かい、この感触が懐かしい。
うちに居ついて、ひいばあに看取られ亡くなったブサ猫が、無性に恋しくなった。
調子に乗って、両手でしなやかな身体をつかんでみる。
嫌がられたらすぐに離そうと思っていたけれど、猫は意外にもされるがままで、わたしの腕の中におさまった。
「どうしたの、おっさん。あんたもわたしのことが嫌いなんじゃなかったの?」
猫は「ニャウン」とひと鳴きして返す。その声は肯定か否定か、いまいち判断しにくいものだった。
まあ逃げる様子はないので、満更でもないのかもしれない。