明日死ぬ僕と100年後の君
どうだ、見たか。やっぱり仮入部すれば、触れるようになったじゃないか。
急激に距離が縮まったところを有馬に見せつけてやろうと、まだおじさんと会話している有馬の方を向いて、固まった。
瞬きを1度、2度、3度。
なんだろう、あれ。おじさんの、赤い法被の胸元がぼんやりと光っている。
おじさんも、向かい合う有馬もそれを気にする様子がない。
猫を抱えたまま、片手でごしごしと自分の目元をこする。
もう一度おじさんを見ると、やっぱり胸元が光っていて、しかもそこから何かが浮き出てきたものだから、今度こそ動けなくなった。
「じゃあ、今日はどうもお疲れさまでした! また次もよろしくお願いします!」
そう言って、ぺこぺこと頭を下げるおじさんから、ぼんやりと光る白い球がぽこんと飛び出した。
それはふよふよと宙を漂っていく。
声を出せないまま目で追っていると、それはまるで引き寄せられるように、有馬の手の中におさまった。
「こちらこそ。またよろしくお願いします」