明日死ぬ僕と100年後の君
困ったような微笑みで、有馬が返す。
おじさんはやっぱりぺこぺこと頭を下げながら来た道を戻っていく。
小さな光る玉を、有馬の右手に残したまま。
おじさんを見送っていた有馬は、相手が見えなくなると自分の手の中を見下ろした。
有馬にも、見えているのだ。あのぼんやりと光る、白い玉が。
わたしの目がおかしくなったわけじゃない。
でもおじさんはまるで見えていないようだった。あの玉は一体……。
「えっ」
有馬はおもむろに右手を口元まで持っていくと、ぽいとその光る玉を口に放り込んだ。
飴玉を食べるように慣れた様子で食べたのだ。わたしの目の前で。
呆然としていると、猫がまた「ナン」とひと鳴きしてわたしの腕の中から逃げ出した。
軽い動きで着地をすると、そのまま有馬の方にテテテと歩いていく。
ゆらゆら揺れるしっぽを見つめていると、足元にすり寄った猫をまた、有馬が首根っこをつかむようにして持ち上げ腕におさめた。