明日死ぬ僕と100年後の君
相変わらず聖人らしからぬ、粗暴な抱きあげ方だ。
でも、どうしてだろう。ふたり……ひとりと一匹はお互いをわかり合っているように見えて仕方ない。
人間と猫。種族がちがうし、会話ができるわけでもないのに。
「……有馬」
声をかけ、歩み寄る。ふらつく足に、気を向けることができない。
まだあの光の玉が残像のように視界に残っている。
あれは一体なんだったのか。
有馬は、何を食べたのか。
「お疲れさま、大崎さん」
猫の頭をぐりぐりと雑に撫でながら、有馬がこっちを見る。
有馬の腕の中の、金色の瞳もわたしに片目を向けてきた。
「いま、何を食べたの?」
色素の薄い瞳が、わずかに見開かれる。
それは些細な、けれど確かな変化だった。わたしは見逃さなかった。
「え? ああ……」
「前にも、有馬が人助けをしたあと、いまみたいに何かを食べるところ、見たんだよね。何を食べたかは見えなかったけど、さっきは……」