明日死ぬ僕と100年後の君
「うちの兄貴の子どもがな。遊びに来るたびすげえのなんの。うるさいし、しつこいし、遠慮なんて知らないし。俺でさえ奴らが1泊してくだけで次の日ぐったりなんだぜ? もやしの有馬なんて2時間持たねえよ」
「うーん。まあ、なんとかなるさ」
困ったような微笑みでそう言うと、有馬はきれいに巻かれた卵焼きをぱくりと食べた。
ふんわり柔らかそうな卵焼き、紅色が美しい焼き鮭、いんげんの胡麻和えにかぼちゃの煮物と、これぞお手本だというような彩り鮮やかなお弁当が彼の前に置かれている。
あのピンク色のごはんは何だろう。黒い豆が入っている。
よく雑誌で紹介される、おしゃれカフェのランチプレートに乗っているやつみたい。
「吾妻のお弁当ってさ」
それまで黙っておにぎりを食べていたわたしが口を開くと、3人はお喋りをぴたりとやめてこっちを見た。
それを少し居心地悪く思いながら続ける。
「すごく綺麗で手が込んでて、美味しそうだよね」
全員の目が、有馬の食べかけのお弁当に向かう。
華やかな、芸術作品みたいなお弁当に。