透明な恋《短》
「でもさ、辛いでしょ。透明人間なんて」
そんなことを言われると思わず、吃驚して目を丸めた。見上げると先ほどまでと違って、夜木君は真剣な顔をしていた。
「いいあだ名じゃない。……だって、今辛そうな顔してるよ伊達さん」
『辛そうな顔??』
ペタッと顔に手を当てる。結構無表情な方だと思ったんだけど……そんなに、顔に出てるかな……。
「透明じゃないよ、俺にはちゃんと見えてる。……透明人間なんて失礼だよ」
『……ありがと夜木君』
高校生になってこんなに心から笑ったのはいつ振りだろう……。そう思うほど自然と笑みが溢れた。
透明人間なんて失礼だって真剣に怒ってくれる人がいる。それが素直に嬉しい。
人と話すのが苦手なのに、彼と話すのは苦痛じゃないなんて不思議だ。
きっとこういう所が、皆に好かれる理由なんだろう。真面目で、思いやりがあって優しい、彼がキラキラ輝いて見えた。