透明な恋《短》
ちょっと落ち込みながら、静かな廊下を歩く。人通りも全然なくて誰の声も聞こえない廊下に、私の足音だけが響く。
今日は、勉強じゃなくてお気に入りの小説でも読んでテンションあげよう。
うんそうしよう。
少し軽くなった足取りで進んでいると、前方から誰かが歩いてきた。反射的に顔を上げ、目を見開く。
「おぉ……よぉ、透明人間」
目が合った彼は、ニヤッと笑みを浮かべた。彼は、黒田 陽一(クロダ ヨウイチ)私に透明人間とあだ名をつけた人。
『……』
無視して彼の横を通り過ぎようとすると、腕をつかまれた。
「おいおい、つれねぇな。話でもしようぜ」
『……離して』
「なんだよ、元クラスメートに冷たいな」
黒田君とは中学の頃同じクラスだった。その頃に透明人間とあだ名を付けられ、それが高校でも広がった。
『離して!!』
手を振り回すが、男の子の力には叶わない。どうしようと困っていると、黒田君がズイッと近づいてきた。