透明な恋《短》
「なに??透明人間の癖に、俺に指図すんの??」
『……』
彼の見下ろすギロリと光る目に、かすかな恐怖を覚えた。
どうしよう、誰か……。心の中で助けを呼ぶ、誰も来ないはずなのに……。そう思っていた考えは打ち砕かれた。
「なにしてるわけ??」
『え??』
声のするほうへ視線を向けると、眉間に皺を寄せた夜木君が立っていた。
「ねぇ、なにしてんの??」
答えない黒田君にもう一度聞く夜木君の顔には、いつもの爽やかな笑みなんてものは、微塵のかけらもなかった。
「こわぁ……元クラスメートと仲良くお喋りっしてただけ、なぁ??透明人間」
なぁって聞かれても困るんですけれど……てゆーか、貴方の方が普通に怖い。
「お前か、透明人間って言い始めたやつ」
夜木君の声が一段と低くなる。俯いていた彼が顔を上げると、普段とは考え付かないほど恐ろしく怒りを含んだ表情をしていた。