透明な恋《短》
【夜木君ブチギレ事件】
めでたく付き合うことになった、うん、今も夢なんじゃないかと頬をビンタしたりする。
今まで努力してなかったけど、最近は自分から進んでクラスの子に話しかけたりもしてる。うん、頑張ってるよ私!!
そんな中一人、クラスでよく話をする子が出来た。名前は子安 夢花【コヤス ユメカ】ちゃん。フワフワしてて凄く可愛らしい子。
「そういえばさ、椎名ちゃんが帰った後。夜木君がブチギレてた事あったよ」
『え??夜木君って、ブチギレる事あるの??』
「うん、怒鳴りつけてて珍しいなぁって覚えてる」
『えー、なに??原因は??』
あの爽やかな彼が怒鳴りつけるほど怒るって、一体何が??
「その子さ、椎名ちゃんが隣の席でかわいそーって言ったの」
『え??』
「椎名ちゃん、透明人間って言われてたでしょ??透明人間が隣でかわいそーって」
ふと、帰りにそんな声が聞こえた日があったなと思い出した。たしか、黒田君にあった日か。
「そしたらさ、ガッターンって大きな音立てて立ち上がって「お前に何が分かるわけ??透明人間って何だよ。どいつもこいつもふざけんな!!」ってむちゃくちゃ怒ってた」
『そうなんだ……』
「後日、言い過ぎたって謝ってたみたいだけど、いやぁ愛されてま、んんッー!!」
「ちょっとお前喋りすぎ」
急に夢花ちゃんの口を塞ぐ大きな手が現れた。見上げると夜木君で、彼は気まずそうに目をそらした。
『ありがとね夜木君』
「いや!!……別に、俺がいやだっただけで……」
ボソボソと呟く夜木君の頬は少し紅い。きっと私も紅いと思う。恥ずかしい、すごく嬉しいけど。
「オアツイねお二人さん」
お互い頬を紅くする私たちを、夢花ちゃんはヒューヒューッと茶化した。
「お前ほんと黙って!!」
【完】