透明な恋《短》



『あの、ありがとう』



小さく呟けば、彼はニコッと微笑んで頷いて見せた。



何て爽やかな……。



「あんまり気にするなよ、あの先生元々あんな感じだし」



『ありがとう』



あんな感じって、先生としてどうなんだろうね。



「俺、夜木ね。夜木彼方(ヨギ カナタ)席替えしたのちょっと前で今更だけど、よろしくねお隣さん」



『あ、どうも』



こういう場合『うん宜しくねぇ!!』なんて明るく振舞えたらいいのだけれど、無理だ。私にはハードルが高すぎる。



授業が始まり教科書を開く、ジーッと黒板の文字を見てノートに書いていくという作業を繰り返し行う。退屈だ。



先生の言っている事が、右から左に流れていく。あー、留まってくれせめてテストまで。



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